【UX手法】簡易ユーザビリティテストのススメ「webサイト・アプリ定性評価でユーザーの心を理解する具体的方法」
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こんにちは。UXリサーチャーの野村です。
自社サイトの問い合わせが増えない。何に問題があるんだろう…という方。
UXが重要というけど、抽象的でイマイチわからない、とっつきにくいという方。
そんな方に対し、事業者様向けのUXリサーチ入門編として今回は「簡易ユーザビリティテストのススメ」と題し、具体的にユーザビリティテストがサイトの設計にどのようなメリットをもたらすのか、また実際にユーザビリティテストを行う上でのアドバイスなども交え、どんな調査なのか少しでもイメージしていただけるよう試験者の実体験からお伝えします。
そもそも、ユーザビリティテストとは
ユーザビリティテストを実施する段階
- サイトの新規構築前(競合調査)またはリニューアル前(既存サイト調査)
- 設計段階で制作したプロトタイプを試す
- リリース後に適切なデザインであるか評価
お客さまの抱える課題にもよりますが、ルート・シーでは前述の1~3のうち、1.サイトの新規構築前(競合調査)またはリニューアル前(既存サイト調査)にユーザビリティテストを実施し、そこで得られた改善点をサイト制作に活かすケースが多くあります。
なるべく急ぎたい場合は、簡易ユーザビリティテストがおすすめ
一般的なユーザビリティテストはデータ分析からターゲット調査、ペルソナ設定、シナリオ設計などを綿密に行い、1サイト(アプリ)1か月ほどかけて実施します。
ただ、調査にそこまで時間をかけられない案件も多くあり、そういう場合は事前調査などのプロセスを簡略化した「簡易」ユーザビリティテストを実施しています。
条件次第ですが、たとえば実施期間3日~1週間程度とスピーディーに実施することができます。
ユーザビリティテストの具体事例
BtoBサービスサイト 簡易ユーザビリティテスト
ユーザビリティテスト背景
法人向けサービスサイトのリニューアル案件にてユーザビリティテストを実施。
サイトをリリース以降、着実に顧客は増えつつあるものの、広告を打っても思うように問い合わせ数が伸びないという課題を抱えたお客さまにサイトリニューアルをご提案しました。
ユーザビリティテスト結果
実際のユーザー(企業のバックオフィス担当者)に近い属性の被験者を選定したことで「そのサービスを実際使うイメージがわかない、この程度の情報であれば、まずは他社を検討する」など、ユーザーのリアルな声を得られました(図2)。
一見するとキレイで、問題がなさそうな対象サイト。しかしユーザーから見れば「他社と比較検討する上で欲しい情報がない」「情報設計・レイアウトが悪く、サービスの全体像がイメージできない」など、まだまだ改善の余地があることが、ユーザビリティテストを通じて明らかとなりました。
ユーザビリティテスト結果から得られたもの
被験者の声「実際使うイメージがわかない」ことを受け、詳細なチュートリアルコンテンツの追加、サービスの導入者・利用者ごと(ユーザーが2種類存在することもユーザビリティテストを通じての気づき)の使い方コンテンツの追加、Q&Aで詳細に答える内容を追加。「サービス導入にあたって考えられるリスクにどう対策できるか不明」という点も、トップや下層ページでしっかりリスクヘッジできることを具体的に訴求するなど、情報量・質を強化。
さらに伝える順、コピーライティングも含めユーザーのニーズを反映できたことで、精度の高い設計となり、お客さまから高評価をいただきました。
決済スマホアプリ(競合)簡易ユーザビリティテスト
ユーザビリティテスト背景
新規スマホアプリ開発の競合分析のため、既存のメジャーな競合3件を調査。「軸がブレないよう開発を進めたい」というお客さまのニーズがあり、デザインコンセプト策定の前段として実施しました。
ユーザビリティテスト結果
また「どうすればポイントが貯まるのか」など「トクをしたい」ユーザーが一番気になることがスマホアプリ内に記載がないなど、スマホアプリを利用する理由を揺るがす、致命的な課題も発見されました。
一方、調査で機能数が多かった競合スマホアプリは、その機能数の割にはわかりやすく、情報設計がきちんとされていて、初めての人でも機能が理解しやすいよう、配慮が随所に見られたり、タッチポイントを増やしてユーザーのロイヤリティ度を上げていく施策が充実しており、ユーザビリティテストを通じて、スマホアプリ開発・ユーザー囲い込みへの本気度が伺えました。
ユーザビリティテスト結果から得られたもの
被験者数は3名で行った本ユーザビリティテスト。
事前インタビューでは、
- 「決済スマホアプリは話題になった当初から使っている」(20代男性)
- 「偽造QRコードのリスクが不安」(30代女性)
- 「決済サービスは極力1つにまとめたい」(40代男性)
と三者三様の利用状況と利用文脈が明らかになりました。
本ユーザビリティテストで得られたユーザビリティ上の問題点と長所、ユーザー利用意向などを弊社でレポートにまとめ、他の調査資料とともにそれらを前提としたUXワークショップを実施。UXワークショップにてお客さま(事業主)と「新規構築するサービスの競合優位性は何か」など方向性を議論した後、それをベースとしたデザインコンセプトをご提案。制作・開発フェーズで方向性がブレないための「目指すべき姿」を策定しました。
オンラインユーザビリティテスト
このご時世、テレワークで業務を行う弊社では、基本的にオンラインでユーザビリティテストを実施しています。
テレビ会議アプリ(PCまたはスマホ(ユーザビリティテスト対象による))を利用するため、被験者の顔(様子)と、操作する画面と操作の様子が録画でき、後から振り返るのも容易で、対面よりもメリットが多いと感じています。
被験者の個人情報漏洩リスクの少ない、オンライン疑似操作
試験者として、ユーザビリティテスト被験者のプライバシー保護の観点から、個人情報は極力取得しないように心がけていますが、決済スマホアプリなどでは個人情報が必須。
そんな場合におすすめなのが、疑似操作です。
疑似操作とは、時間もない中「対象スマホアプリがAndroidのみだが、被験者のスマホがiPhoneで…」と窮地に追いやられた筆者が思いついた苦肉の策だったのですが、試験者が手元のスマホで、ユーザビリティテスト対象スマホアプリとZoomなどの画面共有可能なテレビ会議スマホアプリを入れ、画面共有します。
被験者は画面共有されたものを見ながら、感じたことを発話したり「●●ボタンを押します」など試験者に指示します(疑似操作)。試験者は被験者の発言を聞き、代理で操作します。(図5)
被験者はインストール・セットアップなどの準備も不要、自分のスマホを他人に見せることなく、被験者のプライバシーを気にせずユーザビリティテストが可能です。対象スマホアプリにAndroidのみ、などの制約があっても、被験者のスマホのOS・バージョンも気にせず実施できます。
被験者の職種が営業など、クライアントや社内から頻繁に連絡がある、という場合も、自分のスマホではないので問題なし。
ユーザビリティテストで被験者が行う思考発話(独り言のように、感じたことを口に出す)も、自分で操作する時よりも出てくる場合もあり、被験者からも記録係からも絶賛のこの方法。大変おすすめです。
まとめ
簡易ユーザビリティテストの実践の中で得られた知見、いかがでしたでしょうか。
「簡易」とは言え、得られる情報は情報設計者やweb担当者にとってかなりの「お宝」。
ユーザビリティテストをすれば、サイトの存在意義を問われるほどユーザビリティが低いことが判明する、ということもしばしば。
またユーザビリティテストの前後に行う、被験者(ユーザーに近い属性の方の場合)へのインタビューからは、定量調査・データ分析からは得られないリアルな利用状況・利用文脈が見えてきます。ユーザーの利用状況・利用文脈からニーズの理解が進めば、サイトがユーザーにとって最適な設計になっているか判断しやすくなり、今後のweb展開も考えやすくなります。
サイトの構築・成長に、方位磁針のような役割を果たしてくれる、ユーザビリティテスト。
実施段階や被験者選定など、どのような調査方法が効果的かはケースバイケースですので、ご興味のある方はぜひ、弊社までお気軽にご相談ください。
詳しくヒアリングした上で、適切な方法をご提案させていただきます。
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ルート・シーではユーザビリティテストなどのUXリサーチや、市場分析・企業分析・アクセス解析などを通じてお客さまのビジネスの芯に迫り、課題を根本から解決するサイト構築や運用方法をご提案いたします。
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