自律的でしなやかな組織へ。~ヒエラルキーからマトリックスへの組織変革~
皆さまこんにちは。
ルート・シー CDOの小澤です。
当記事では、ルート・シーで行っている組織変革についてお話をしたいと思います。
タイトルにあるようにヒエラルキー型からマトリクス型組織へ、それも一部組織ではなく全社的に転換した深化の試みについて、悩みや過程も含めてプロセスを共有させていただければと考えています。
またこの組織変革にあたってデザイン思考を用いたプロセスを経ていますので、この記事がデザイン経営やマトリクス組織、組織開発に関心がある方にとって何らかのヒントになれば幸いです。
目次
なぜ組織変革の必要があったのか(私たちの課題と未来)
私たちの主な事業は受託のweb制作・開発です。こういったビジネスで社員を抱えて制作を行う場合、コスト構造上、現場の稼働率を上げることがビジネス上の大命題となります。
弊社もその典型で、スタッフはみな専業化し、専門性・効率を上げ経験効果を高める形を採ってきました。プランナーは提案に、ディレクターは進捗管理、デザイナーはデザイン…といったように各職能を専門分業化し、管理最適化した機能別組織を長らく採用してきました。
その弊害として、垂直分業ゆえの「考え、指示する人」と「作業する人」といった分断や職能間の分断、顧客志向の低下といった傾向が生じるような場面も残念ながらありました。もう少し具体的に言うならクライアントワークであるにも関わらず「●●社さまのビジネスに貢献する、価値発揮をお手伝いする」というよりは「案件をこなす」という意識が垣間見られる程でした。(あっ、ほんの一部ですよ!!ご心配なさらず…!)
これはお客さまに対する姿勢として非常によくないことですし、何より働く皆にとっても気持ちが良いことではありません。
また一方で我々は、もっとお客さまのビジネスに寄り添い、具体的な価値やKGI、KPIを一緒に追い求める組織であろうとしていました。
先に説明したような状況下で新たなモデルや価値観を展開していくには大きな変容が必要で、組織として根本的な検討の必要に迫られていました。
約30時間に上るマネージャー陣によるワークショップから導き出されたのは「自律的」で「お客さまに直接向き合う」組織
新しい期を迎える約5カ月前、自分達の課題を改めて見つめなおし組織の未来を描くためのワークショップがスタートしました。参加メンバーは執行役員3名含むマネージャー陣7名。新型コロナウイルスの流行を機にリモートワークが中心となった弊社のワークショップはオンラインツールMiroによって行われました。
この時、問いとして扱ったのは下記のようなものでした。
- 現在のルート・シーはどのような会社といえるか
- 今後、誰にどのような価値を提供していくのか
- その価値をどうやって提供するか
- 前項目2、3を踏まえ、ソフト・ハード面で整合性が取れた組織とはどのようなものか
これらの問いを起点にした発散と対話を通じた収束を繰り返しながら、振り返ると実に検討の時間は30時間にも及んでいました。
細かなプロセスについては後の章で紐解いていきたいと思いますが、検討の結果導き出された、我々が目指す組織を実現する形状は端的に以下の2つで表現することができます。
- 顧客のビジネス特性に合わせ、各自の能力・資質に合わせたチーム構成
- 各職能の連携を図る横組織と中長期的に専門性を育成できる縦組織のマトリクス
相談役として担当マネージャーは付けているものの、チームリーダーに多くの権限を移譲し、チーム当たりの人数を少なくして自律的に動きやすい状況を作りました。
どのようにマトリクス型の組織が導き出されたか
私たちは前述の問いに沿って検討を進め、まず下記の1の問いによって自分達の現在地を確認したのち、2、3をVPC(バリュープロポジションキャンバス)などのフレームワークも使用しながら、対話を通じて解を導き出していきました。
- 現在のルート・シーはどのような会社といえるか
- 今後、誰にどのような価値を提供していくのか
- その価値をどうやって提供するか
- 前項目2、3を踏まえ、ソフト・ハード面で整合性が取れた組織とはどのようなものか
次に2、3の問いに対する解を戦略と考え、これを実現する組織のソフト面(共通の価値観、組織風土、人材、スキル)とハード面(仕組み、組織構造)のひとつひとつについて発散と収束を繰り返して言語化します。
収束フェーズでは各自の言葉の意味やニュアンスがどのようなものかじっくりと傾聴し、認識のずれがないか丁寧に確認し、認識のずれを受け止めて止揚に努めることでより良い形の可能性を探ります。
このプロセスにより戦略を実現する組織風土や人材像として見えてきたのは「個人が自律的に連携し合い、判断し、スピード速く顧客とともに考えられる組織」でした。
これを実現する組織構造とはどんなものか、という分解された問いに向き合ううちに出てきたのが「小グループによる疑似独立採算制」「プロジェクト単位のチーム」といったアイディアで、これを中長期的に実現しようとしてたどり着いたのが「各職能の連携を図る横組織と中長期的に専門性を育成できる縦組織のマトリクス」。
またこれまで弊社は拠点(東京・大阪)で組織が分かれていましたが、リモートワーク中心のワークスタイルに移行したため、居住地に縛られない東阪2拠点を統合した組織構造を考えることが可能になり、それによる柔軟なリソース調整がマトリクス型の実現を後押しする結果となりました。
マトリクス型組織バッドパターンへの対策
一方、マトリクス型においてよく課題として挙げられるのは以下のような点です。
- 所属が二重になり、どちらの上司にエスカレーションや相談をしたらよいか分からない
- MTGなどが増え、コミュニケーションコストが増える
これらは一般的によく耳にするバッドパターンであり、プロジェクトメンバー内でも懸念された内容でした。
これに対する対策として、弊社では以下の2点に留意して説明や会議体の設計を行いました。
- 縦(職能グループ)・横(案件チーム)の優先順位を明確にする(縦<横)
- マネジメントに関しては「内容の種別に応じてエスカレーション」「相談しやすい人に相談する」
体制変更前にスタッフひとりひとりとの面談を行い、優先順位と機能の違いを説明し対話をしていく中で、エスカレーションやMTG増加などの課題はさほど大きな混乱を生むことなく移行(解消)をすることができました。
2つめの「相談しやすい人に相談する」は、これまでの体制ではエスカレーションラインを固定してしまうことによって課題解決のスピードや質がリーダー・マネージャーの相性や関係性に依存してしまう事象が見られたため採用された方法です。
これまでのヒエラルキー型では考えにくかったことですが、「その課題に適した人」「信頼できる人」に相談することを良しとすることで課題解決のスピードや質を上げるのではないかという仮説をもとに試行しています。
ただしその分マネージャー同士の連携を密にし、本来のマネジメント領域外からもたらされた課題の共有や調整にコストを掛けるなどの対策を採っています。
すべては「圧倒的ヒト志向」を実現していくために
ここまで弊社が抱えていた課題と、お客さまのビジネスに寄り添って具体的な価値やKGI、KPIを一緒に追い求める組織であるための変革についてお話をしてきました。
また私たちが掲げる「圧倒的ヒト志向」はお客さまだけでなく、その先のサービス利用者や関わる人全てによい体験を届けることを意味し、今回の組織変革は不確実な時代にあっても柔軟にスピーディにひとりひとりが動ける組織であるための変化のひとつでもあります。
「圧倒的ヒト志向」を実現していくために、リモートワーク中心の働き方など新たな取り組みには混乱はつきものですが、変化を恐れず、柔軟に進化し続ける組織でありたいと考えています。