採用サイトの考え方。コーポレートサイトと何が違う?(後編)

皆さまこんにちは。
ルート・シーのアカウントプランナー(営業)辻谷です。

現在は営業として、お客さまの採用サイト制作のお手伝いをしておりますが、前職では大学で大学生・短大生の就職活動の支援をする仕事をしておりました。
現在の採用サイト制作の経験・前職の就職の現場で生の声を聞き支援を行った経験の両面から、「採用サイトの考え方。コーポレートサイトと何が違う?」のより深い部分についてお伝えいたします。

関連リンク
採用サイトの考え方。コーポレートサイトと何が違う?(前編)

1)採用サイトのメリット・採用サイトの考え方

前回の記事でもご説明をしたとおり、求職者の多くは応募する企業の情報収取のために企業サイト・採用サイトをチェックします。

適切な採用サイトを制作するメリットは求職者の
1)志望度を高めることができる
2)入社後のミスマッチを防ぐことができる
という2点でした。

これらをもう少し、深堀して考えていきたいと思います。

何のために採用サイトをつくるのか

「採用サイトを制作したところで、検索で表示されることは難しいのだから、採用サイトをつくっても意味がないのでは?」と考え、採用サイトを持たない(あるいはないがしろにしている)企業もあるかと思います。確かに、求職者と企業の出会いは、IndeedやDODA、マイナビといった求人情報サイト(転職サイト)や転職エージェント・ハローワークからの紹介、イベントなどが圧倒的に多いでしょう。
では、採用サイトを制作することには意味がないのでしょうか?採用サイトは、求職者がその会社と出会った後にこそ、力を発揮します。求人情報サイトなどで企業を知った求職者の多くは、「さらに深い内容を知りたい」または「本当のところはどうなのか?」という気持ちで、情報収集を行います。その時、求職者は「この会社を受けようかな?」とか「本当に応募して大丈夫かな?」といった不安や迷いの気持ちがあります。その不安や迷いを払拭し、「この会社に挑戦しよう!」「ぜひこの会社で働きたい!」という気持ちにすることが採用サイトの目的です。すでに貴社を知っている求職者の背中を押す、つまり「志望度を上げる」ことが採用サイトの役割です。

「応募者が増えること」のみをゴールにしてはいけない

ただし、忘れてはいけないのは採用サイトにおけるゴールは、ただ「応募があること」ではない、ということです。いくら応募者が多く優秀な人材が集まったとしても、出した内定を蹴られる・入社したがすぐ辞められる・思ったような活躍をしてくれない、という状況になっては意味がありません。求職者に好印象を与えることは大切ですが、企業の良い面だけをアピールすると不信感が募って応募されない・入社後に事実とのギャップで早期退職となるといった可能性が高くなります。適切な情報発信ができていれば「入社後のミスマッチを防ぐ」ことができます。
採用サイトの制作では、応募者の「数」と「質」のバランスを考えた情報発信が必要です。ここで言う「質」とは決してただ優秀な人材ということでなく、企業に「合う」人材、つまり「定着し、長く活躍してくれる人材」のことです。「志望度を高め応募を増やすこと」かつ「マッチをした人材が応募すること」の両輪を軸に制作することが大切です。

2)採用サイトに求められること・伝えるべき内容

では、「数」と「質」を求めた採用サイトを考えるにはどういった情報発信が必要なのでしょうか。「前編」では、具体的なコンテンツについてご紹介しました。そちらに記載したとおり、採用サイトに盛り込みたい内容は多岐に渡ります。しかし、全てを掲載するのは難しいかもしれません。そこで、どういった考え方でコンテンツを考えていくとよいかをお伝えいたします。

ここでポイントになるのは、求職者が「採用サイトで得たいと思っている情報」を正しく発信が出来ているか、ということです。

求職者が採用サイトで得たいと思っている情報とは

先述のとおり、転職という大きな選択をする求職者には当然、不安と迷いがあります。その不安を払拭するためには、「そこで働く自分の姿が想像できる」ことが大切であり、良い面も悪い面も含めて「判断ができる情報が揃っている」ことが必要です。

例えば企業側が、求職者に上場企業である・歴史がある・多角的な事業を展開するといったことをアピールしたりしますが、求職者にとっては、この会社がブラック企業じゃないか、未経験でも問題ないか、希望する部署に配属されるのか、といった情報の方が重要だったりします。企業の理念やビジョンも伝えるべき情報ではありますが、求職者としては自分が毎日行う業務は何なのか(もっと言えば、朝何時に出社して何時に帰宅できるのか、そこにどんな人がいるのか、働く服装はどんな感じか、仕事でしんどい思いをすることはないのか)の方が興味があり、自身の働く姿をイメージできなければ応募しようという気持ちにはなれません。なので、実際に働く際の具体的なイメージが想起できるような社内の「生の声」「先輩の1日」など具体性のある情報を載せることは有効的です。

また、入社後のミスマッチを防ぐためにも、会社が募集職種の良い面だけではなくできる限り厳しい側面も記載しておくことも大切です。求職者が知りたいのはその「リアル」です。「少し残業はありそうだけど、やりがいのある仕事ができそうだな」とか、「未経験から挑戦できそうだけど、自分で努力する部分は大きくなりそうだな」といったメリットデメリットを総合的に考えて、その上で「この会社に応募したい」と判断した求職者は恐らく志望動機も高く、その会社に合った人材である可能性が高いはずです。

そもそも「応募してほしい人材の人物像」の設定ができているか

情報の発信についてもう一つ注意する点があります。本文では、何度か「企業に合った人材」といった言葉を書きました。どうでしょう、企業にとって具体的にそれがどんな人物であるかイメージできているでしょうか。
採用サイトを制作する際に「こんな人に応募してほしい」というペルソナを設定することはとても大切です。もちろん多様な人材の応募を募りたい、という気持ちがあるかと思います。ですが、例えば現在活躍しているメンバーのコンピテンシーや、業務の内容的に備えておいてほしいスキルはあると思います。そういった要素を洗い出した上でコンテンツを制作することが大切です。
求人サイトでは、全ての求人が同じテンプレートで掲載されています。ですが、自社で採用サイトをつくる際にデザインもコンテンツも全てがオリジナルのものになります。人物像の設定をすることで、そのペルソナに向けたデザインにできますし、発信するコンテンツのブレをなくすことができます。

漠然とした「いい人が応募してくれたらいいな〜」という考えでは、結局誰にも刺さらない採用サイトになってしまいます。しっかりと人物像を定めているからこそ、その誰かにとって唯一無二の「この会社を受けたい!」と思う採用サイトになるのです。

ペルソナを明確にする、という点はコーポレート制作でも採用サイトも同じ。
ペルソナって何?という方はぜひこちらをお読みください。

関連リンク
【webサイト制作・webシステム開発 虎の巻】 Vol.5「明確なターゲットユーザー設定がwebサイトの成果を決める」

3)制作の中で気をつけるポイント

1.中途と新卒採用で情報を分ける

新卒採用と中途採用の両方を行っている場合、情報はきちんとわける必要があります。例えば、新卒・中途採用では入社時期、選考の基準・内容、研修、待遇などが異なるはずなので、少なくとも募集要項はそれぞれのものを制作すべきです。また、コンテンツの中で、両者共通の情報なのか、中途採用では別なのかといった注釈を入れることも必要です。
中途採用を行う場合、年齢層や経験の幅が広くなるため、より募集人材のペルソナの設定を明確に行うことが必要です。若年層を募集する場合は「研修充実、未経験でもOK」といった内容になるでしょうし、即戦力を求める場合は「活躍の場を広げられる、経験を活かせる」といった内容になるはずです。
ペルソナが違うため、新卒と中途でデザインを変える企業も多くあります。それぐらいに別々の情報発信を行う必要があるのだ、とご認識ください。

2.イラストや素材写真ではなく、実際の現場写真を使用する

魅力あるサイトにしようとデザイン性に富んだイラストや写真を掲載したい、とお考えかもしれません。ただ、求職者にとっては写真などの視覚情報も求職者にとっては数少ない情報源の一つです。特にコロナ禍である昨今はリモートでの面接も多く、なかなかオフィスの様子や社員を直接目にすることができません。
「うちのオフィスは綺麗じゃないから出したくない」という場合もあるかもしれませんが、フリー素材ばかりだと求職者に「リアル」が伝わらず、不信感から応募が集まらないか、またはせっかく応募があっても後に「思っていたのと違う」と内定辞退、早期退職になってしまいます。出し方の工夫は必要ですが、積極的に実際の現場写真を使用することをおすすめします。可能であれば先輩社員といった「そこで働く人」の写真があるとベストです。

3.応募しやすい導線設計・情報発信を行う

採用サイトでは「応募のために何をする」という次の行動を明確にすることが大切です。 まず、応募フォームやエントリーフォームをわかりやすくするなど導線の設計に注意が必要です。また、応募方法が電話・フォーム・就職採用サイトと複数ある場合がありますが、応募方法は絞られている方がより求職者がスムーズに行動できます。せっかく様々な情報を掲載して求職者の志望度を上げることができても、肝心の応募をどのように行っていいのかわからなければ、求職者のやる気を一気に削いでしまいます。
また、応募のフローを掲載することも重要です。説明会・会社見学会の有無、応募から採用までの期間、必要な書類、書類を提出するタイミング、採用試験の内容、面接の回数 など。内定までの全体像が理解できると、安心して応募に進むことができます。また、こういった情報の出し方が親切なことは、企業への信頼にも繋がります。

4.スマートフォンでも閲覧しやすいサイトにする

特に新卒採用では、採用サイトがスマートフォンでも閲覧ができることは必須です。ほとんどの就職情報サイトはスマートフォンに対応しています。就職情報サイトにて目星をつけた企業をより詳しく知るためリンクを飛んだ時に、サイトが正しく閲覧できないと、その時点でページを閉じられてしまいます。
また、特に新卒採用では学生がそもそもパソコンを持っていないことも多く、情報収集のメインの手段がスマートフォンであるという場合も少なくありません。「スマートフォンでも閲覧できる」ではなく、ペルソナによっては「スマートフォンで見るための採用サイト(パソコンでも閲覧できる)」という情報設計・デザインにした方がよい場合もあるでしょう。

5.採用サイトの内容を社内に浸透させる

採用サイトの制作をある一つの部署が一任され全て行っている、という場合は少なくありません。その場合、制作を行っていること、記載されている内容を全社で共有することは必須です。採用サイトでは「真面目にコツコツ取り組む方を募集します!」とあるのに、面接時に企業のトップ層がそれを知らず「わが社には明るく元気がある人が向いています!」などと言ってしまう、などは意外とよくある失敗です。理想は企業の採用計画や会社のありようが明確であり、それが採用サイトにも反映されているという状態ですが、それが難しい場合も多いと思います。少なくとも採用に関わる全ての人が採用サイトに一度目を通すということを徹底してください。
就職活動・内定承諾・入社というそれぞれの行動の中で採用サイトは都度見直されます。採用サイトに書かれていることと、就職活動等を通じて実際に関わって知る情報の整合性がとれていることは非常に重要なことです。

4)まとめ

これまでの文章をまとめます。

1)採用サイトはその企業に興味をもった求職者の「志望度」を上げるためにある。不安と迷いを払拭するサイトをつくることが大切。

2)採用サイトのゴールは目先の「応募」でも「内定承諾」でもなく、企業に定着し長く活躍してくれる「企業にマッチした人材の確保」であるため、企業の良い面だけアピールしても意味がない。

3)求職者が知りたいのは「そこで働く自分の姿が想像できる」ためのリアルな情報、いい面も悪い面も含めて「判断ができる情報が揃っている」ことが大切。

4)採用したい人物像のペルソナを明確にしてデザイン・コンテンツを計画する。

5)気をつけるべきポイントは以下の5つ
 ①中途と新卒採用で情報を分ける
 ②イラストや素材写真ではなく、実際の現場写真を使用する
 ③応募しやすい導線設計・情報発信を行う
 ④スマートフォンでも閲覧しやすいサイトにする
 ⑤採用サイトの内容を社内に浸透させる

前職で学生の就職支援をしてきて思ったのは、「志望動機を語りやすい」採用サイトはよいサイトだな、ということです。求職者は志望動機で「会社のどこに魅力を感じ、自身の力をどう活かせるか」を語ります。応募したい・この会社で働きたいという感情が醸成されるためには他の会社との違い・会社の特徴への理解と、自身といかに合っているかという納得感が必要です。正しい情報発信は志望動機を高めると同時に、応募へのハードルを下げることにも繋がるのです。

月並みな言葉になりますが、「求職者の立場」に立って考えられたサイトがよい採用サイトであると言えます。華美なデザインやよい所ばかり書かれたサイトよりも、リアルにその場にいる自身を想像できるわかりやすく親切なサイトを目指しましょう。

5)さいごに

ここまで採用サイトの考え方についてご案内しました。「そうは言っても、採用サイトは予算が少ない」「採用担当者にwebの知見がない」「今ある採用サイトをどこから変えたらいいかわからない」といったお悩みもあるかと思います。
ルート・シーでは、お客さまのご状況を丁寧に伺い、ご予算等に合わせて適切な改善のご提案いたします。ぜひお気軽にご相談ください。

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