ユニバーサルアナリティクスの計測終了とGoogleアナリティクス4
Googleアナリティクス(ユニバーサルアナリティクス)の計測が2023年7月1日で終了することが発表されました。(※1)つまり、自社webサイトに設定しているGoogleアナリティクスによっては、サイトのアクセス状況やデータが取得できなくなるということです。 Googleデータポータル、Googleスプレッドシートでアドオンを使用して作成している定期的なアクセス解析レポート、Googleアナリティクスと連携して使用している他のツールも対応が必要です。
本記事は、企業のweb担当者もしくはこの春web担当者になったweb担当1年生に向けて、可能な限り平易な言葉で、いつ、具体的に何をしたらいいのかを伝えてまいります。
※1 2022年3月16日Google公式発表。有償版は2023年10月1日まで。
Googleアナリティクスって何?
web担当者として、上席者からの見出しの質問に回答できる方は次節からご覧ください。
Googleアナリティクスとは、webサイトのアクセス状況がわかるアクセス解析ツールです。Googleが提供しているマーケティングプラットフォームのうちの1つで、無料版と有料版が用意されています。本記事で次節以降で紹介する、次世代進化系Googleアナリティクス「Google Analytics 4(以降GA4)」も、無料で使用することができます。
2021年12月調べで、日本の上場企業の9割が使用している(※2)ことがわかっていて、中小企業の使用率はさらに高い事が予想できます。
筆者はGoogleアナリティクスを「webサイトの健康診断ツール」と捉えています。webサイトでどのページがアクセスされているのか/されていないのかを調べたり、滞在時間数や1回のアクセスで他のページも見らているかどうかを確認し、訪問者がwebサイトの中をストレスなく自由に見ることができているか、訪問時の満足度を測ったりします。
健康診断には診断書が付きもので、「月次アクセス解析レポート」と称して定点観測的な数値をレポートとして作成することもあります。
ときには精密検査を行うこともあります。サービスのお問い合わせをしていただいたお客さまはどんなページを見ているのかを分析して、「動機付け」となったコンテンツやお問い合わせをする際にみたページ「道のり」を分析することで、サイト内の他のページのリニューアルや、新サービスのマイクロサイトで展開するコンテンツの参考にもします。
また、Googleのツールですので、Google検索を使用して訪問した訪問者がどういうキーワードでwebサイトへ訪問したのか、他のツールに比べて詳細にわかる(※3)利点があります。キーワードを知ることで、訪問者の訪問目的や知りたい情報を推測することができます。検討段階にある訪問者の求めている情報が、webサイトに掲載されているのか、自社サービスで対応できているのかを判断する材料にもなるでしょう。
webサイトの担当者は、お客さまもしくはお客さまになり得る方のアプローチを、直接データとして知ることが出来ます。意思決定のために、データを元にした提案を上席者に行う重要な「お役目」です。どの訪問者にとっても、自社サービスへのアプローチやアクションにつながる、より満足度の高いwebサイトに育てていきましょう。
自社のwebサイトにGoogleアナリティクスが導入されているのかを知る方法は、次節で紹介します。
※2 DataSign社のオンラインプライバシーサービスにおいてデータ収集したデータを統計的にまとめたもの
※3 Google サーチコンソールとの連携が必要
自社サイトのGoogleアナリティクスは何を使っているのかを知る
Googleアナリティクスは、テクノロジーの進歩やwebマーケティングの潮流、私たちがweb技術と関わる際に使用するスマホやタブレットなどの「道具」に併せて進化を続け、今日に至っています。
最新バージョンは、2020年10月14日(米国時間)に正式にリリースされたGoogleアナリティクス4(以降GA4)になります。AIを使用した予測機能、スマホやタブレット、パソコンと複数デバイスでのアクセスを結合しての分析、プライバシー重視のデータ収集ができるようになっています。とは言え、ほとんどの企業・個人で使用しているGoogleアナリティクスは、ユニバーサルアナリティクス(以降UA)もしくはGoogleアナリティクス360(※4)であるという方が大半でしょう。
自社のGoogleアナリティクスのバージョンを知るには、トラッキングコード(※5)を確認することで簡単にわかります。
※4 UAの有料版
※5 Googleアナリティクスが発行している計測コード。トラッキングコードが設置されているページが読み込まれることで、計測データを取得。設置には、通常社内IT担当者かパートナー企業が対応する。
webサイトに直接記述している
お手元のパソコンブラウザで、Googleアナリティクスを設置しているwebサイトにアクセスします。画面上を右クリック、ページのソースを表示してください。ソースで確認できるトラッキングコードに「analytics.js」の記載があれば、UAです。
「gtag.js」の記載がある場合は、すでにGA4を導入している可能性もあります。その場合はキャプチャ画像のような「gtag(‘config’, ‘UA-」の記載があれば、UAを使用しています。「gtag(‘config’, ‘G-」の記載があればGA4は導入済です。
Googleタグマネージャを使用している
管理画面でUAの記載を確認することができます。
Googleタグマネージャの設定画面の解読は知識が必要なので、社内のIT担当者もしくはパートナー企業に確認しても良いでしょう。
UAでもGA4でもない
「ga.js」「dc.js」「urchin.js」の記載がある場合は、すでにサポートが終了しているGoogleアナリティクスです。その計測データは正しくない(もしくは計測できてない状態である)可能性があるので、早急に最新バージョンへの対応を進める必要があります。
UAとGA4の違いは
筆者は全く別のツールと捉えています。
なぜなら、計測方法が全く違うからです。
UAは、ページやセッション(※6)単位でデータを知るツールです。
GA4は、訪問者がコンテンツに対して行った行動単位でデータを知るツールになります。したがって、指標の計測定義も変わり、UAを使用した施策の重要指標として使われることも多い直帰率などページのディメンションや指標のほとんどが廃止になりました。
スーパーマーケットに例えると、
お店に来て、野菜売り場を通って総菜売り場を通ってお店からでたという、「お店に入ってから出るまでの道のり」を計測するのがUAです。
お店に来て、キャベツをかごにいれた、じゃがいもを手に取ってみた、じゃがいもを売り場に戻した、総菜コロッケをかごに入れた、会計に並んだ、会計した、次回の特売チラシを持って帰った、という、「お店で取った行動」を計測するのがGA4です。
1回の来店で同じ売り場を通ってはいるものの、何も買わずに帰ってしまったお客さんと購入して次回のチラシも受け取るお客さんもいます。「お客さんの質」が異なることは明らかです。
サービスページに訪問して、サイト内の他の関連サービスページに遷移することなく、外部のサイトに行ってしまった(直帰・離脱した)セッションは、UAでは「他のページを見ずに外部サイトに行ってしまったので、ページ情報に不足があったのか?」という仮説が考えられがちです。しかし、ページ上の動画を再生している、資料をダウンロードしているということがわかった場合どうでしょうか。そのセッションがサービスの検討をしている確度の高いセッションであると捉えられます。
サイト/アプリ上で、訪問者が何をしたのかを計測するのがGA4です。筆者は、訪問者の行動分析がUAに比べて格段に簡易になった印象を受けていて、コンテンツを最適化するスピードも上がり、クオリティのコントロールもしやすくなるのではという期待感があります。
※6 サイトやアプリで訪問者が操作を行っている時間のこと。セッション数は訪問数
GA4を「今」導入するべきなのか?
この問いに対する答えは、自社の「Googleアナリティクスとの関わり方」によって対応タイミングが変わってきます。また、導入に際し、よくいただく質問にも触れてみました。
普段からGoogleアナリティクスを使用している場合
答えは「はい」です。
特に、昨年対比を見たい方は、2022年6月末までの実装が必要です。ただ、焦らず、ステップを踏んで実装することを推奨します。
STEP1:Googleアナリティクスの設定を見直す
リモートワークが進み、IPでアクセス除外を設定している場合の対応はお済でしょうか?また、GA4ではローデータの取得(※7)も可能です。欲しいデータと今後取得していきたいデータは何か、の議論・調整を行いましょう。
STEP2:Googleアナリティクスのデータを使用しているシステムやツールの対応
社内ヒアリングの上、整理しておきましょう。GA4導入後に対応する必要があります。外部サービスも洗い出して、対応時期を確認すると良いでしょう。場合によってはパートナー企業への依頼も必要になる可能性があります。
STEP3:実装と設定をどうするか
自社で行うのかパートナー企業に依頼するのかを検討しましょう。社内にwebアナリストがいてIT部門のエンジニアの協力が得られるなら、自社導入が良いと思います。ただ、専門家がいなかったりSTEP1での設計見直しやSTEP2での追加対応が必要な場合は、外部に相談しましょう。
15カ月(記事執筆時:2022年4月から数えて)があっという間ですね。。。
※7 GA4のデータをBigQueryに連携することでSQLによってローデータを分析することが可能。無料版も使用可能。
Googleアナリティクスは実装してあるけどたまにしか使っていない場合
答えは「はい、だけど慌てる必要なし」です。
ただ、GA4の実装と設定は早めに対応されることを推奨します。UAのトラッキングコードとGA4のトラッキングコードは併記可能です。お互いのデータへの影響もありません。前述のとおり、UAとGA4は計測方法が違うので、これまでUAに慣れている方は戸惑うことが多いと思います。同じディメンション名や指標名を使っていても、計測方法が違うので数値が違います。UAのデータとGA4のデータは合致しないので、全く別のツールとして取り扱う必要があります。今のうちから使用に慣れていくことを推奨します。
アクセス解析レポートのデータはGA4に変更したほうがいいのか?
上記のとおり、計測方法が異なるためUAとGA4は全く別物、別ツールとなります。現段階でGA4を元にして作るレポートは全く別物となるでしょう。
ただ、GA4は機能の完成度としては不十分で毎月機能の追加・更新・仕様変更が行われています。したがって、今UAで対応しているデータも今後対応されて、レポートで表示ができる可能性もあります。
しばらくはUAとGoogleアナリティクスの併用、というのがwebアクセス解析業界の共通認識となっています。
UA側に何か対応する必要があることは?
データ計測停止後、その後約6か月はアクセス可能です。Googleはこの期間にUAのデータをエクスポートしておくことを強く推奨しています。集計・編集可能なフォーマットとPDF両方でエクスポートしておくと良いでしょう。
後説
以上、UAの計測が終了となることで、GA4の使用は待ったなしとなりました。本記事を執筆している間にもUAとGA4で作るレポートの違い、今GA4に切り替えたほうがいいのかお客さまからお問い合わせをいただきました。
前述のとおり、未だGA4は発展途上のツールで、このコラムの内容が公開される頃にはまた別の新しい情報がアナウンスされているかもしれません。今後この半年から一年でセミナーの開催、書籍や専門家のナレッジが多く公開されるでしょう。web担当者として、最新情報をキャッチアップし、GA4を活用して自社のwebサイトをブラッシュアップしていきましょう。
本記事では、具体的な実装方法や設定については触れておりませんが、ルート・シーでは実装や設定のご相談も承っております。お気軽にご相談ください。
※本稿は執筆時点での内容です。